居間に満ちていた声は、ある日、手のひらの小さな箱へと住み替えた。世界は耳の内側に折りたたまれ、時間はひとりのために開く。 可搬という技術が、私的な聴取という詩を発明した。
記憶のラジオ 声の記憶と戦後のメディア空間
「声は人の顔であり、形であり、身体であり、私そのものである」
戦後の日本では、ラジオが「音を届ける装置」であると同時に、国家の声を浸透させるインフラでもあった。 玉音放送に始まり、天気予報、農業指導、音楽番組、戦災孤児への呼びかけまで──その「声」は、家庭という私的空間の奥へとじわじわと浸透していった¹。 私はその「声」を、はじめは意味ではなく響きとして受け取っていた。父の横で静かにラジオを聴いていたとき、言葉の意味はまだ理解できなかったが、語り手の抑揚、間合い、時に緊張を含んだ沈黙が、空気を変えるのを感じていた。 言葉の背後にある何か──それが「声の記憶」として、私の中に刻まれていったのだ。
家族とラジオ:少年期の「耳の風景」
“聴くということは、誰かの声を体内に招き入れるということだ。そこには思いがけない親密さがある。”
🎨アートと知的財産の金融化
絵筆は声なき叫びを記録し、彫刻は時を越える影を刻む。だが市場に置かれた瞬間、芸術は資産となり、声は価格に換算される。 🖌️ アート金融化の四段階モデル アートは、最初からお金のために生まれたものではない。けれども、誰かの…
マンガ・アニメと金融化
コマ割りは時間を刻み、吹き出しは声を浮かび上がらせる。その声が雑誌から単行本へ、テレビから映画へ、そして世界市場へと広がったとき、マンガは物語であると同時に資産となった。 戦後日本において、文学や新聞に続く新たな「声のメ…
音楽と金融化
暗いスタジオに赤いランプが灯り、息を飲む一瞬ののちに録音ボタンが押される。 空気の振動は磁性体を揺らし、後には数字の列として保存される。 歌は時間を超えて流通し、権利は契約の網の目を伝って利子を生む。 レコードはサブスクへ、ジャケットはプレイリストへ。 音は「私的な体験」であると同時に「金融資産」に接続される。
順番が逆じゃないか――お金が先に来る時代への小さな覚書
気がつけば、どこもかしこも「お金にする」話ばかりだ。 新しい技術が出れば、まずは投資。映画や音楽も同じだ。 伝えたい物語よりも、どれだけ市場が膨らむか、どれだけ資本を呼び込めるかが最初に語られる。 本来なら逆だろう。 心…
ロバート・レッドフォードの功績
ロバート・レッドフォードが2025年9月16日に米ユタ州の自宅で亡くなった。享年89歳。合掌🙏 ところで、メディアの金融化という流れの中でサンダンス映画祭について触れない訳にはいかないだろう。同映画祭は、ロバート・レッド…
メディア産業の金融化―コンテンツが投資商品になる時代
NetflixとSpotifyが変えた風景 かつて映画は映画館で観るものだった。音楽はCDを買うものだった。新聞は毎朝配達されるものだった。しかし2025年の今、これらの前提はすべて過去のものとなった。メディア産業は根本…
